2017年9月17日日曜日

331:韓国大統領のブレーンがメルケル首相の核問題での仲介提案に「非常に感謝し歓迎」。恥ずかしい安倍首相の姿勢

 前回330の続きです。
 本日発売のシュピーゲル誌のインタヴューで、文韓国大統領府の鄭義溶(チョン・ウイヨン)国家安保室長が、北朝鮮核問題に⇨仲介の意思を表明したメルケル首相に「非常に感謝している」と述べています。
 鄭氏は文大統領の外交ブレーン中枢で 元ジュネーブ代表部大使であった外交官です。
この閣僚級の人物の発言は重要なので、一部(下記写真の約三分の一)を訳出しておきます。
        見出しは「私たちは首相に大変感謝しています」です。
Der Spiegel Nr.38-16.9.2017 S.92
シュピーゲル:アンゲラ・メルケル連邦首相が、北朝鮮との危機で仲介の申し出をしましたが、果たして役立つでしょうか?

鄭:私たちは私たちを援助したいと望むメルケル首相に非常に感謝しています。私たちは提案を歓迎します。この朝鮮半島の危機はグローバルな意味のある懸案です。ドイツはすでにイランとの核問題協定の話し合いに積極的な役割を果たしました。

シュピーゲル:この協定はモデルになり得るでしょうか?

鄭:この両方の事例は簡単に比較することはできません。しかし私たちは、イランと交渉で得られた経験から学ぶことができます。

シュピーゲル:交渉まで行き着くことにあなたはどれだけ確信をお持ちですか?

鄭:私は、北朝鮮が核実験とロケット発射を停止しない限り、 私たちは交渉を始めることはできないと考えています。

(以上訳責:梶村)

 前回の読者のコメントで触れましたが、一昨日の9月14日に行われた記者会見で、私は専門家にこの件を質問しています。上記位の鄭氏の考えと共通する内容で、なぜドイツが仲介役にふさわしいのかについて、その背景を知るために要旨を挙げておきましょう。
  
 これはドイツ外国人特派員協会がドイツの次期政権の外交課題について、民間のシンクタンクである⇨ドイツ外交政策協会(DGAP)の研究者二人を招いて行われた会見です。
Dr.Christian Mölling (Mitte)Berlin 14.9.2017 Foto:T.Kajimura

 梶村:北朝鮮核問題でメルケル首相は仲介意思を表明したが、それをどう評価しますか?

DGAP研究副主任⇨クリスチアン・メリング博士
    メルケル首相の提案は真剣な(ernst)ものです。ただ、イランとの交渉の経験でもわかりますが、まずは北朝鮮の核開発での地位が現状(status quo)として固まるまで待たねばならない。そうなって初めて仲介に向けた交渉は始めることができます。

梶村:ではなぜ仲介の役割をするについて、例えばフランスでなくドイツとなるのでしょうか?

メリング博士:これに関しては、ドイツには三つの有利な特徴があります。
    1)ドイツは核兵器を保持していない非核国家です。
    2)南北コレアと同じように国の分断を体験しています。
    3)その間もドイツには長く核軍縮政策を続けた伝統があります。
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 北朝鮮は先日の水爆実験と、昨日のグアム島まで届く弾道弾実験の成功で、かなり彼らの目的を達して満足感を示し始めています。すなわち政治力学での地位の現状が固まり、交渉開始の打診が行える最初の機会が近づいていると判断できるかもしれません。
ドイツ外務省の水面下での動きが気になるところです。

 そんな時、今日の聯合ニュースの報道によれば韓国の文大統領は安倍首相との電話会談で、⇨北への人道支援の趣旨説明をしたとのことです。

文在寅大統領と安倍晋三首相が電話会談を行った。安倍氏と電話で協議する文大統領(左、青瓦台提供)と安倍首相(右、資料写真)=15日、ソウル(聯合ニュース)

 それによれば:

会談で安倍首相は人道支援の時期を考慮するよう要請。これに対し文大統領は「この問題は国連世界食糧計画(WFP)と国連児童基金(ユニセフ)が北の乳幼児や妊婦に対する事業支援を要請してきて検討することになったもの」と説明。「原則的に乳幼児と妊婦への支援は政治的な状況と関係なく扱わなければならない事案と考えている」と強調した。

とのことです。
 この安倍晋三は北朝鮮制裁のためには、民主主義政治の最も基本的で普遍的な義務でもある乳幼児や妊婦への国連の人道支援も遅らせるのが当然であると文大統領に要請したとのことです。

 安倍氏は、大変な危機の時であるからこそ、このような支援をすることも話し合いと交渉への糸口の一つになることが理解できないのでしょう。
 こんな人物が日本の首相とは。全くもっての恥ですね。隣国北朝鮮の弱者を無視することが、いずれは自国民を無視することにつながることが理解できない。日本の近代史から何一つとして学んだことがない首相の哀れな歴史観と人道感覚。電話で話す文大統領の気持ちなど全く理解できないでしょう。
こうして国家が没落していくのです。情けない限りです。日本は二度目ですね。

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 ところで、余談ですが、以上を書いていてふと思い出したことがあります。
  
 上記のシンクタンクDGAPはベルリンの動物園に近い古い建物にあるのですが、ベルリンの壁が崩壊して20周年になる2009年11月に、壁崩壊で始まった欧州同盟の拡大を回顧し、また将来をどう考えるかについて、ドイツのヴァイツゼッッカー元大統領とチェコのハーヴェル元大統領がこの研究所で対談したことがあります。
 
1989年の壁崩壊のチェコの民主化に際して、この両者の友情と信頼の絆が東西欧州統一に大きな貢献をしたことは、今や歴史の一コマです。
この対談は⇨「私たちはまだ模索の途上だ」と題されて記録されています。欧州の大政治家の視野の広さがよくわかります。
 私も傍聴したのですが、20年後のこの二人の友情と信頼がどのようなものかを目の当たりにしたものです。

 この欧州統一で大きな役割を果たした二人の大統領のどちらもすでに故人となりました。その時の写真がありますのでご覧ください。右はヴァイツゼッカー夫人です。
Weizsäcker,Havel Berlin DGAP 1.Okt.2009 Foto:T.Kajimura


 


2017年9月10日日曜日

330:ドイツのメルケル首相が北朝鮮との核問題で仲介の意思を表明「喜んですぐにも始めたい」

 本日、9月10日、ドイツメディアが一斉に報じていますが、本日付フランクフルター・アルゲマイネ日曜新聞(F.A.S)のインタヴューで、メルケル首相が緊張を高めている北朝鮮との核問題で解決に向けた話し合いの仲介をする意思があると表明しています。

メルケル首相、夏休み明けの記者会見8月29日Photo:T.Kajimura
インタヴューでは、北朝鮮の核兵器開発と長距離弾道弾の開発を制御するための話し合いの枠組みを作りの仲介を「望まれれば喜んで直ぐに始める用意がある」と述べています。

では、電子版では読めないインタビューの発言部分を翻訳しておきましょう。
これが同紙の本日の一面で、発言とその背景の解説がトップ記事として「メルケル北朝鮮でイニシアチヴを執る」の見出しです。
FAS紙2017年9月10日トップの報道
 総選挙を前に選挙戦の最中のインタビュー本体は2、3面の見開きを使った非常に長いものですが、この発言は終わりの質問に答えたところで出てきたものです。

(以下翻訳)

質問:別の論点ですが:北朝鮮の問題です。ヨーロッパは関与を避けるべきでしょうか?

 
 北朝鮮政府の国際法に違反する核兵器開発への対処は、北朝鮮がここから遠くにあるとしても、ヨーロッパにとっても重要な問題です。私は外交的解決にしか可能性はないと見ています。誰しもが、ある地域全体が軍備拡張の悪循環に陥ることなど願うことはできません。ヨーロッパもまた統一した見解を示し、外交的解決に取り組み、そして制裁に関する行程で全力を挙げるべきです。



質問:イランとの交渉の席にはドイツも国連安保理の常任理事国でないにもかかわらず着いていました。首相には北朝鮮の件においても、これが想定できるのでしょうか?

 
 もし交渉での会談に私たちの参加が望まれるならば、私は喜んで直ぐにはい(Ja)と言います。イランとの交渉は、私が首相になる前から始められており、昨年になってようやく良い結果を迎えました。非常に長い時間がかかったとはいえ、しかしそれは外交にとって重要な時間であったのです。私にはこのような枠組みが、北朝鮮との争いの解決に関しても考えられます。ヨーロッパ、特にドイツはこれに関して積極的な部所で大いに貢献する心構えを持つべきです。
(訳責;梶村)
  
 解説しますと、放置すれば、絶対に避けるべき武力衝突はもとより、韓国や日本も核武装に向かい、世界中の核軍縮の枠組みが破壊されて、取り返しのつかない危機が迫っていることを、メルケル氏はよく認識しており、この件で先の水爆であった可能性のある核実験の後も、米韓日中の各首脳と電話会談をしており、明日の11日月曜日には、ロシアのプーチン大統領ともこの件で話し合う予定であると、同紙は伝えています。
 
 何しろトランプ政権は不安定でそれ自体が一方の危機要因であるところ、プーチン大統領がメルケル首相の考えに同意すれば具体化する可能性は大きいのです。メルケル政権と中国政府との関係はここでも何度か書いていますが、以前から非常に良いものです。 この関係は続いています。

 メルケル首相のこの意思表明の背景には、

 (1)ドイツは、イランとの核開発制限交渉に加わり、核保有大国である国連安保理常任理事国5カ国との間の交渉を長年の調停役として果たし、ついに成果をもたらした外交経験があること、
(2)またドイツは、旧東ドイツの置き土産として北朝鮮との外交関係を維持しており、ベルリンと、ピョンヤンにはそれぞれ大使館があり、この件では独朝の政府間で直接交渉できる立場にあることなどが挙げられています。
 この報道では、独政府筋は、この外交ルートですでに両国間の話し合いが始められていることを示唆したとのことです。


ベルリンの北朝鮮大使館 写真:Wikipediaより
ベルリンは北朝鮮の大使館があることから、過去にも米朝会談や、日朝会談が行われたことがあります。
在ピョンヤンのドイツ大使館 写真:Wikipediaより

 2週間後の日曜日の24日にはドイツでは総選挙がありますが、メルケル首相の続投は間違いないとされているところから、この発言となったものと思われます。
 上の写真の夏休み明けの90分の記者会見でも、彼女は世界中の数百人の記者からの約80の質問に対して丁々発止と答えて、隙を見せない貫禄を示したものです。
  
 成り行きによっては、緊急性からして選挙後に新政権ができるのを待たずにドイツ仲介に向けて交渉が本格的に始められるかもしれません。

 それにしても、本来ならば、被爆国であり非核三原則を原則とし、また隣国で当事者でもある日本政府こそが、このような話し合いの仲介、調停をするのに最もふさわしいはずです。
 しかし、非常に残念なことに、拉致問題に拉致されてしまい、北朝鮮に対する危機感だけを煽ることしかできない視野狭窄の安倍政権にこのような大人の外交を期待することはとても無理です。せめて安倍首相にはメルケル首相の爪の垢でも煎じて飲んで欲しいものです。

 ですから安倍氏に期待したいことは、ドイツの仲介と調停努力に関して、せめてその足を引っ張ることだけはしないでほしいことだけです。

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(9月11日追加)
 本日、ドイツ政府のザイベルト報道官は、メルケル首相がプーチン大統領と電話で話し、
北朝鮮問題は平和的方法で解決されるべきであること、また北朝鮮が話し合いに応じるよう国連安保理の新たな制裁決議の実現が急がれることで両者は同意したと述べました。

 またウクライナのドンバス地域の紛争の地帯での国連視察団に関するプーチン大統領の提案に、メルケル首相は基本的に同意したとのことです。
 

2017年8月15日火曜日

329:ベルリンでの従軍「慰安婦」警告集会写真報告・Fotoberichte zum Gedenktag für die ,Trostfrauen"des japanischen Militärs am 14.Augst in Berlin





  ここベルリンのブランデンブルグ門前のパリ広場では2013年以来続けられている元日本軍従軍「慰安婦」の警告追悼集会も今年の8月14日で5度目となりました。
韓国でも新政権が成立した本年は、ベルリンでの行動もいよいよ充実したものになっています。
 今年の夏はベルリンも悪天候なのですが、この日は晴れて気温も24度ほどの好天でした。とりあえずわたしの撮影した写真をご覧ください。(午後4時から2時間の集会ですので、ちょうど逆光で写真は撮りにくいのです。)
 いよいよ国際的になり、連帯組織も安定し、何よりも若い人々の参加が増えているようです。プログラムも多彩で充実したものになっています。
クリックすればパノラマ写真で拡大してみることができます。百聞は一見に如かずです。
解説抜きにご覧ください。
写真を引用される方はPhoto:Taichiro KAJIMURAのクレジットを必ず入れてください。

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