2011年8月1日月曜日

16:ドイツ連邦交通省気象局の放射能汚染予測中止について

ここ数日間、日本の特に小さな子供のあるお母さんたちが頼りにしているドイツ気象局(DWD)によるフクシマの放射線粒子の拡散予測が7月29日で中止になってしまったので、何とかならないかという問い合わせが引き続いています。

これが7月29日の最終のシュミレーションです:
http://www.dwd.de/wundk/spezial/Sonderbericht_loop.gif
ここには左下に赤字の独英語で「必要があれば再開する」旨が記されているので、中止により信頼できる情報源を失って不安になった方々が再開を望まれるのはよく理解できます。

そこで、この役所について以下の解説をしておきます。
この役所は連邦政府の「ドイツ連邦交通・建設・都市開発省」の一局で正式の名称は「ドイツ連邦交通省気象局」で、フランクフルトの近くのオッフェンバッハにあります。HP:
http://www.dwd.de/bvbw/appmanager/bvbw/dwdwwwDesktop?_nfpb=true&_pageLabel=dwdwww_start&_nfls=false

この役所の業務は「ドイツ気象局に関する法律」 (Gesetz über den Deutschen Wetterdienst )で規定されていますが、なぜフクシマの汚染拡散シュミレーションを行ったかの根拠もこの法律にあります。

ここで根拠となる条項は主として以下のA)およびB)の二つです:

A)同法第4条(任務)の第1項の2:
2.  die meteorologische Sicherung der Luft- und Seefahrt,
空路および海路の航行の気象上の安全
(ドイツの航空機と船舶の航行安全の確保。これがこの役所がなぜ交通省の1局であるかの根拠です/梶村解説)

B)同第1項の7:
7.  die Überwachung der Atmosphäre auf radioaktive Spurenstoffe und die  Vorhersage deren Verfrachtung,
大気中の放射性微量元素の監視とその運搬の予報 
 (これがフクシマ事故によるシュミレーションの気象局任務履行の根拠です/梶村解説)

わたしの記憶では、ドイツ外務省は確か3月12日か遅くとも13日に在日ドイツ人に対して 、できるだけ早急に関西、九州方面への避難、あるいは日本からの出国を勧告し、大使館も大阪に避難しています。またルフトハンザ航空は成田への乗り入れを停止し、長い間ドイツからの成田便はソウルで別便に乗り換えの処置をとりましたが、これらは予想された航空機と乗員の被曝を避ける処置です。
同時にドイツ大使館は出国を希望するドイツ人のために関西空港に特別の窓口を設けて帰国の便宜を図っています。日本滞在中の国費留学生は全員一旦ドイツに帰国させました。
これらの処置の判断の根拠になったひとつが気象局による予報です。 

また近いうちにここで詳しく書きますが、ドイツ環境省は3月11日の夜(日本時間12日早朝)に「福島第一でメルトダウンが起こる可能性は高い」と正確に判断したことを、わたしはレットゲン環境大臣から最近になって直接聴きました。

 さて、気象局によるシュミレーション の中止と「必要があれば再開する」との赤字注意書きですが、おそらくフクシマの放射能汚染拡散が、比較的「安定」して変化がないために中止の判断をしたものと推定できます。しかしフクシマの状態が悪化し、汚染が拡大するようであれば直ちに再開されることは間違いないでしょう。
理由は日本滞在中のドイツ人の安全確保のためには、上記のように気象局は法律の任務を負っているからです。再開の可能性、すなわち事態の悪化の可能性を認識しているからの注意書きです。ということは、再開されれば汚染拡散が深刻であると言うことです。 

したがって、再開を願われる被災地と近郊のみなさんのお気持ちは良くわかりますが、本来は日本政府にこのような予報を続ける当然で基本的な義務があるのです。
たとえば東京都内が福島市ほどに汚染される可能性が、これからも長期にわたって続き、不安のなかで生活せざるを得ないのが現実です。したがって、技術的には十分可能ですから、日本政府に汚染予報を要求するのが、まずもっての順序であると思います。

ただし、日本政府がその必要性を認識しながらも 直ぐには実現できないならば、ドイツ政府に連帯を依頼すれば、上記法律の第4条第3項には「外国との気象上の協力もする」とあるので、喜んで協力してくれることも間違いないでしょう。要するにそれだけの政治判断ができる政治家がいるかいないかの問題なのです。
もっとも永田町のサーカスのノミたちには期待するのは無理でしょう。本当に日本の政治の惨状には情けなくなります。







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