2011年11月26日土曜日

54の3:高レベル核廃棄物輸送阻止闘争2011年の陣の3

54の2は工事中のまま、先を続けます。

この項は11月25日18時以降です。
簡単に消えた部分の輸送の経過を述べますと、昨日フランスとの国境近くの駅に停車したままの列車は朝9時に出発、10時にドイツ側のザールブリュッケンを通過し、ノイキルヘン駅で5時間ほど停車し、機関車と添乗の警察官がドイツ側と交代しました。そのまま列車は現在ラインラントパァルツ州を通過中でゴアレーベンに向っているところです。
ザールブリュッケンを通過する輸送列車。これはまだフランスの機関車 写真:DPA


重複しますが、まず、主戦場のゴアレーベン付近の見取り図をもう一度挙げておきます:
taz Grafikから借用

25日の昼の段階でゴアレーベン近郊のヴェントラントには2000人ほどの支援者が集まっており、週末の今夜から明日の大集会に向けて続々と現地に向っています。
輸送は行程の半分ほどですが、ラアーグを出発してすでに52時間経由しています。これは最長記録です。
ドイツ国内では、線路と沿線の各地で抗議行動が待ち受けているので停車することが多くなると思えます。20時にはハスロッホ付近で、線路上に人がおり、停止しています。
 (以上25日20時15分)

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 ・ハスロッホでの列車の停止は、スキを突いてキャスクの車輛の上に飛び乗り、反原発の旗を立てた者がいたとの報道。

・ゴアレーベンでは真夜中近くになり、昨夜に引き続き、図面左のキャンプ・メッチンゲン(Metzingen)を警察官が取り囲み、すでに排除に入ったとの情報もあり、いずれにせよ本陣最前線の橋頭堡の攻防第二戦開戦が目前の模様。
(26日0時00分)
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見取り図の右端の廃棄物中間保管施設(Zwischenlager)正面入り口の今夜の情景:
写真:Mark Mühlhaus / Attenzione


まさに嵐の前の静けさです。現地は昨年とは違い、気温は0度以上でこの季節としては比較的温かいのですが、アルプス以北のヨーロッパはここひと月、異常に乾燥しておりドイツでもライン河が渇水で航行制限しています。さらに、北ドイツは明日から嵐になるとの天気予報で、まさに嵐の前のようです。
(今からひと寝入りします、日本は朝ですが。)
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26日午前:
パァルツ州のハスロッホの反原発行動のグループによる25日午後の行動のビデオです:

http://www.cinerebelde.org/castor-suedblockade-2011-p-117.html?language=de

線路の手前までデモをして、警察側の阻止線と対峙すると、少し引き返しいくつかのグループにわかれて
一斉に線路に向けて走り、成功すれば座り込む戦術で、ここでも一部が成功しています。
しかも停止中の輸送車にひとりが乗り、反原発の旗をかかげたうえで逮捕もされずに消えました:
写真:dapd
 これです:
 このようないたちごっこが沿線各地とゴアレーベン現地でも繰り返されています。

26日正午の段階で輸送列車は各地で妨害で停止を繰り返しながらヘッセン州を通過しニーダーザクセン州に入りハノファーを通過したところです。終点のダンネンベルクまで150キロメートルほどです。

現地には市民運動側の情報によれば全国からの支援者のバス150台が現在続々と午後の中央集会(図面の中央のEsso Wiese)に集結しつつあります。はたして何千人になるかは不明です。
(以上26日12時)

・昨晩の列車を待ち受ける現地での「前夜祭デモ」約1500人のビデオです:
http://www.graswurzel.tv/p178.html

6)昨年2010年11月の阻止闘争報告

昨年の秋はドイツ政府の原発稼働延長決定に対して史上最大の反原発運動が起こりました。
わたしはその報告をちょうど1年前の11月末に執筆しています。
フクシマ事故が起こる前に警告した『世界』誌の特集「原子力復興という危険な夢」(今年の日本ジャーナリスト会議賞授賞しました)への寄稿で、ドイツの原発稼働延長の経過と、盛り上がる反原発運動に関する報告です。
この「政権を揺るがすドイツ反原発運動」から、ゴアレーベンの昨年11月初めの阻止闘争に関するところの結論部分のみを以下転載します。
今日これから本格的に始まりつつある「2011年の陣」の前史として参考にして下さい。

『世界』2011年1月号174〜175頁より、以下転載:
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非暴力直接抵抗運動と緑の党の台頭

ところでメルケル政権にとっては、このような政府と議会での問題よりもさらに深刻な、近いうちに本格的に政権を揺るがしかねない事態が議会外で並行して起こっている。議会外での反原発運動の高まりと南部バーデン・ウ゛ッテンベルク州の首都シュトゥッガルトの中央駅改築を中心とする新鉄道網建設計画に反対する市民運動の高まりによる州保守政権の危機と、緑の党の急速な支持率急伸がそれである。
 
本稿では紙面の関係で反原発運動のみを報告する。下院決議を前にした九月一八日の国会包囲デモであるが、反原発運動では最大級の一〇万人の規模となった。野党の党首たちも参加したデモ隊は国会と首相府を完全に包囲し、国会正門では入れ代わり立ち代わり座り込みが行われ、声を限りに原発の即時撤廃を訴えた。これほどの規模になったのは、これまで参加したことのない市民層も目立ったからで、そのため反原発運動の大きな祭りのような多彩な明るい雰囲気のため、警察官も楽しんでいるようであった。
ところが一一月五日から始まったゴアレーベンでの高レベル核廃棄物搬入反対闘争は、九日まで足掛け五日間昼夜を徹しての、非暴力直接抵抗運動と警備陣との、これまでにない激しい文字どおりの遊撃戦となった。
ドイツは脱原発法により使用済み核燃料の再処理が禁止され、すべて原発敷地内に建設された中間貯蔵施設に貯蔵され将来直接処分されることになっている。ところがそれまでにフランスに委託して再処理された核燃料の詰められた十二基のキャスク(容器)がラアーグの再処理施設よりゴアレーベンに鉄道輸送されたのである。数年に一度の搬入はこれで一二回目であり、もう一回の搬入が予定されている。今回は反原発運動の高揚のため全国各州の警察官と連邦警察官、合計約二万人が警備のため動員された。フランス国境手前の鉄道線路への座り込みのため進路を変更し大幅に遅れてたのであるが、ゴアレーベン現地での抵抗は激しいかった。まずは六日の集会には全国から五万人が集まり、その内約一万人ほどが、農地にいくつかのキャンプを設営し、そこからゲリラ方式で線路の敷石をはがす作戦を追究、また線路上や貯蔵施設前の道路を数千人で徹夜で占拠したのである。加えて地元農民が道路の要所をトラクターで封鎖したため、警備側のロジスティクが混乱、警察機動隊員の交代も、食料調達も十分できなくなる状態であった。半面デモ隊の方は食料も十分、麦藁の詰まったジャガイモ袋がマットにもなるし、これは警棒への有効な楯にもなった。警察官の消耗の方がはるかに大きく、同情を呼んだほどである(タイトルの漫画)。
ここに来て、全国の警察組合の委員長は「政治の失敗を警察官の肩に負わすことは間違っている。政治家の責任である」と批判し、さらに「私は連立政権が脱原発を放棄したことを残念に思う。あれは苦労して合意されたものであり、多くの警察官も満足していた」と述べた。
 さて、このような反原発運動の高揚を背景に、緑の党の支持率が総選挙後の一年間に文字どおり倍増し、一時は社会民主党の支持率を超えた。九月以来、各種の世論調査でも全国で二二〜二五%で定着しており、もはや国民政党となるのではないかと論議されている。
 特に来年九月に州選挙を控えているベルリンと、三月に州選挙のある南部バーデン・ウ゛ッテンベルク州の二つの州では、支持率が三〇%を越えて定着傾向にある。後者は州都シュトゥッガルトの中央駅改築を中心とする新鉄道網建設計画に反対する市民運動が盛り上がりが背景にある。よりによってドイツで最も豊でかつ保守的な州の市民運動が、かつての東ドイツの市民と同様に、「我々が人民だ」と毎週のデモを一年間も根気よく続けているのである。ここでは、戦後六〇年も続いたキリスト教民主同盟の政権が破れ、一挙に緑の党を首班とする社会民主党との連立政権成立することが現実視されている。そうなれば、史上初めて緑の党の州政権が「グリーン・ニューディール」の政策をかかげて登場することになる。
 このように、ドイツは統一二〇年を経て、非暴力直接抵抗運動と直接民主主義の追究により、さらに大きく変わろうとしている。
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 転載終わり。
Man sitzt schließlich in einem Boot: Heiko Sakurai BLZ 9,Nov.2010

この掲載に使ったタイトルの漫画も挙げましょう。
 漫画の見出しは「ゴアレーベンの呉越同船」。ふきだしは「あなたの同僚をの世話をお願いします。彼は30時間も私達を何度も排除してすっかり消耗しています」
Berliner Zeitung 2010年11月9日掲載。Heiko Sakuraiさんの作品。


 今年は、全国からの動員は政府の脱原発決定もあり、とても昨年ほどにはならないでしょうが、対立の激しさは同じであるようです。

1 件のコメント:

  1. 「STOP 」の赤信号を実現する人民の「緑」に思う。

    TVの前で汚染しているはずの世間を眺めているだけの人、
    ネットに繋がって本当の情報を探している人たち、
    二分割の民心がすすみつつある日本はパラレル・ワールドになった。
    いけいけ青信号と要注意の黄色は机上のまぜこぜ緑でしかない。

    切磋琢磨無き日本の政治の歴史を今ぞ思い知るや・・・。
    「無い袖は振れない」と。

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