2011年12月17日土曜日

57:野田首相の「冷温停止」は概念の乱用、放射線の排出防止がもっと大切/ドイツ専門家

今日、12月16日のドイツのニュースも朝から野田首相の「冷温停止」宣言を東京から例外なく批判的に伝えています。典型的なひとつとして、先ほどでましたシュピーゲル誌の電子版の記事の一部からドイツの専門家の見方を紹介しましょう。
破壊された原子炉で「冷温停止」を述べることは「ありえない正常化を示唆する」概念の乱用であり、安定とはほど遠いのが実情であること、それより放射線の排出防止の方がもっと大切であることが指摘されています。
野田首相による、いまだに健在な原子力村のデマに近い宣伝であることがちゃんと見抜かれています。
この宣言により、日本政府への3・11以来積もりに積もった国際的不信は確定的になることだけは間違いありません。本音では「日本政府は馬鹿者の集まりである」と思われても致し方ありません。

また、さすがに日本のメディアでも、この「冷温停止収束宣言」に対しては批判的な論調が多いようです。そのひとつ、中国新聞の論評は優れており、シュピーゲル誌を裏付ける見解です:

前のめりの政治判断 「緊急事態」続く
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201112170072.html

なお野田演説とは直接関係ありませんが、ドイツの経済紙の東京特派員が最近語った日本の体験記の昨日15日の注目すべき記事を、Eisbergさんが全文翻訳されていますので紹介します。これは特派員が本音を語ったものとしては貴重なものです。悲しいことですが実情です。ぜひ読んでください:

独ハンデルスブラット紙東京特派員のスピーチ 「原発事故後の生活」
http://d.hatena.ne.jp/eisberg/20111216/1324014227

(17日追加)一夜明けて世界中の論調が一致して批判的見方をしていることは当然とはいえ顕著です。
脱原発を確定したドイツからの批判が厳しいのは当たり前としても、原発核大国の英米仏すらそうなのです。井の中の野田ドジョウ内閣のガラパゴス化も亢進を極めつつあります。
ただ問題が深刻な核汚染であるので、笑い飛ばして済ませられないことが、世界にとっての悲劇です。
きょうのTBSのニュースがYoutubeでいまのところ見れます:
「冷温停止状態」宣言に厳しい論調も
http://www.youtube.com/watch?v=nMTtdLXYS1c

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見出し:福島原発の冷温停止
東電には素晴らしいが、住民にはどうでもよい 

リード:日本政府の言葉によれば暴走した福島第一原発はふたたび制御下にあるとのことだ。しかしドイツの 核専門家は、状態はいつでもひっくり返りうると警告している。住民にとっては通達された原子炉の冷温停止は価値がない。

Kaltabschaltung im AKW Fukushima  
Schön für Tepco, egal für die Bevölkerung
Nach den Worten der japanischen Regierung ist das havarierte AKW Fukushima Daiichi wieder unter Kontrolle. Deutsche Nuklear-Experten aber warnen: Die Situation kann jederzeit wieder kippen. Und für die Bevölkerung ist die verkündete Kaltabschaltung der Reaktoren wertlos. 

(野田首相の主張説明の部分は省略)

ーーーーこの専門家の間で「冷温停止」と呼ばれていることを日本政府は重要な段階として祝っている:すなわち原子炉内の温度が摂氏100度以下に低下。それにより原子炉格納容器内の放射性物質は安定し、論理的には制御できない連鎖反応(再臨界・訳者)は起きえないというのだ。

しかしドイツの原子炉安全協会(GRS)の専門家は、この場合での冷温停止の概念の扱い方を批判する:この概念は、正常な(原子炉・訳者)稼働に適用されるものであって、カタストロフィーの場合には用いられないとスポークスマンはシュピーゲル誌に語った。「これは正常化を示唆していますが、しかしフクシマにはそれは存在していません」とスヴェン・ドクテル氏は述べる。

Diesen in Fachkreisen genannten "cold shutdown" feiert Japans Regierung als wichtigen Durchbruch: Die Temperatur im Innern der Reaktoren ist unter 100 Grad Celsius gefallen. Damit ist das radioaktive Material in den Reaktorkammern stabil und es kann theoretisch zu keinen unkontrollierten Kettenreaktionen mehr kommen.

Experten der deutschen Gesellschaft für Reaktorsicherheit (GRS) aber kritisieren den Umgang mit dem Begriff der Kaltabschaltung. Dieser sei für den Normalbetrieb vorgesehen - und nicht im Falle einer Katastrophe, erklärte der Pressesprecher im Gespräch mit SPIEGEL ONLINE. "Das suggeriert eine Normalität, die in Fukushima aber nicht gegeben ist", sagt Sven Dokter.

(冷温停止の国際的概念規定の説明は省略)

ーーーーーこれより前にオーストリアの環境保護団体「グローバル2000」の原子炉専門家であるラインハルト・ウーリッヒ氏は原子炉内の温度は実際には基本的にもっと高温でありうるとし、「ここで冷温停止を語ることは、意図的な嘘と紙一重だ」と述べた。溶融した燃料は原子炉圧力容器の底を突き抜け、塊となって格納容器の底に横たわっている。推定ではそこではまだ3000度であるという。

Zuvor hatte ein Atomexperte der österreichischen Umweltorganisation Global 2000 erklärt, dass die Temperaturen in den Reaktoren in Wahrheit wesentlich höher sein dürften. "Hier von Kaltabschaltung zu sprechen grenzt an eine bewusste Lüge", sagte Reinhard Uhrig. Die geschmolzenen Brennelemente hätten sich durch den Boden der Reaktordruckbehälter durchgebrannt und lägen nun als Klumpen auf dem Boden der Umhüllung. Dort wiesen sie weiter Temperaturen von schätzungsweise 3000 Grad auf.

小見出し:警告解除には早すぎる
Zu früh für eine Entwarnung


しかしGDSの専門家はこのシナリオはあり得ないとする:3000度の高温では燃料は液状であるはずで、とても「塊」と言うことは出来ない。加えて100度以上であれば引き続き水蒸気が原子炉から立ちの登り、高い放射線量が測定されるはずであるからだ。

 「提出されている温度値からすれば、現状では原子炉内でより大きな範囲での核分裂は起こらないと見なせるだろう。」とGRSのスポークスマンは述べる。その場合はクセノン133やヨード131などの核分裂物質がより大量に測定されなければならない。「この安定した状態はしかし、事情によっては急速に変化しかねません」とドクテル氏。重ねての地震、新設された冷却装置の停止など、これらの多くの想定されるシナリオによって再び危険な状態が起こりえるからだ。

Die Experten der GRS halten dieses Szenario jedoch für ausgeschlossen: Bei einer Temperatur von 3000 Grad könne man längst nicht mehr von einem "Klumpen" sprechen, denn dann wären die Brennelemente flüssig. Zudem würde bei Temperaturen über 100 Grad weiter Wasserdampf über den Reaktoren aufsteigen - und erhöhte Radioaktivität messbar sein.

"Bei den vorliegenden Temperaturwerten kann man davon ausgehen, dass es momentan in den Reaktoren nicht in größerem Umfang zu Kernspaltungen kommt", sagt der GRS-Pressesprecher. In so einem Fall müssten auch in größere Mengen Spaltprodukte wie etwa Xenon 133 oder Iod 131 gemessen werden. "Der stabile Zustand kann sich unter Umständen aber schnell ändern", sagt Dokter. Ein weiteres Beben, das Ausfallen der neu eingerichteten Kühlsysteme - es seien viele Szenarien vorstellbar, die erneut zu einer kritischen Situation führen könnten.


東電の技術者たちにはこれが基本的な一歩であるとしても、このことは避難地域内にかつて住んでいた何万の人間、また現在も原発廃墟のまわりで生活し続けている人間にはほとんど意味をなさないであろう。ひとびとは被曝におびえ、この地域の汚染された果物、野菜、米や肉におびえているのである。

したがって、冷温停止よりもさらなる放射能の排出を防ぐことのほうがより大切である。今もなお原子炉圧力容器の割れ目や穴から、放射性の水が漏れ出している。これまでの数ヶ月の間に東電は溜まり続けるため放射能の水を海に放出しなければならなかった。


東電の計画では2012年には4号機の貯蔵プールから燃料を運び出すことが見込まれている。この原子炉はカタストロフィーの時点では停止中であった。にもかかわらず燃料を冷却のために貯蔵していたプールの天井が破壊されたのだ。これによりここの状態は安全からはほど遠い。「搬出が実際に成功するならば、安全性の面では、この方がもっと重要な大変な成果です」とドクテル氏は述べた。

Was für die Tepco-Techniker ein wesentlicher Schritt sein mag, dürfte für die Tausenden Menschen, die einst innerhalb der Sperrzone wohnten, und jene Menschen, die jetzt noch im Umkreis der AKW-Ruine leben, kaum eine Rolle spielen. Sie haben Angst vor der Strahlung und vor kontaminiertem Obst, Gemüse, Reis oder Fleisch aus der Region.

Wichtiger als die Kaltabschaltung der Reaktoren wird es also sein, das weitere Austreten von Radioaktivität zu verhindern. Doch immer wieder sickert strahlendes Wasser durch Risse oder Löcher aus den Reaktordruckbehältern. In den vergangenen Monaten musste Tepco angesichts der schieren Massen radioaktives Wasser ins Meer ableiten.

So ist im Fahrplan Tepcos wohl vorgesehen, 2012 die Brennelemente aus dem Lagerbecken des Reaktors 4 abzutransportieren. Zwar war zum Zeitpunkt der Katastrophe dieser Reaktor abgeschaltet. Dennoch wurde das Dach der Becken, in dem die Brennelemente zur Kühlung in einem Wasserbasin lagern, zerstört. Damit ist die Lage dort alles andere als sicher. "Würde der Abtransport tatsächlich gelingen", so Dokter, "wäre das in Puncto Sicherheit ein sehr viel wichtigerer Erfolg."

 原文は:

http://www.spiegel.de/wissenschaft/technik/0,1518,804157,00.html

(訳責:梶村太一郎)

1 件のコメント:

  1. 最近の日本では歴代の総理に何らかの共通不具合があるとみた。
    漢字が不得意で誤読する総理答弁氏、自称インテリで米国語贔屓であった。
    その後は今に至って語彙間違い、原稿棒読み発言、専門用語乱用、・・・etc。
    得意げに省略符丁や英語を使う様は可笑しい。
    大物政治家ぶるの大人達は滑稽だ。
    ホームルーム国会と言われる集団が日本の政治状況、今さらではあるが。

    「ここで冷温停止を語ることは、意図的な嘘と紙一重だ」とは言い得て妙である。
    ここで「意図的な嘘」発言の撤回の最後のチャンスもあるかと、
    ウーリッヒ氏の紳士的なお言葉でありませんか。
    温情をかけられて気が付かないであろう厚顔無恥の野田総理。

    嘘を真としたからには反原発世界と決闘です。
    もちろん国際的知見ルールで。
    原発推進国でさえも日本の味方はすまい。

    自己暗示の「冷温停止」を世界に公言し、決定的な愚者の証明をした。
    惨事偽装の総理を支持することで墓穴を掘っている政党は終わりとなる。
    これは誰の党利党略か興味深い今後の政治動向だ。

    そろそろ、賞味期限の切れた政治の腐り時が来ている。
    傍観している野党も同類だと知れ!

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