2013年1月28日月曜日

145:アウシュヴィッツ解放記念日にネット妨害警告。原発事故はさらに悪質な犯罪である

 本日1月27日はソ連軍によるアウシュヴィッツ解放から68年の記念日です。ポーランド、ドイツはもちろんヨーロッパの諸国からおびただしい数の記念追悼行事と、被害者の声の報道が届いています。

ドイツの公共第一テレビは→「アウシュヴィッツの生存者たちは新たな反ユダヤ主義を嘆いている」と伝え、また、シュピーゲル誌電子版は→「77370が77369を捜す」とのタイトルで、解放時に3歳であった少女が国際赤十字を通じて、腕に入れ墨された囚人番号をたよりに、ようやく30年後に母親と巡り会った胸をえぐるような証言を淡々と伝えています。
アウシュヴィッツ解放時看護婦に抱かれているのが証言者と推定されている。シュピーゲル誌電子版
 彼女Zinaida Grynewitschさんは、アウシュヴィッツ収容所で、ナチスの医師たちが人体実験のモルモットに使用するためにガス室に送らず、生かしたため生き延びた少数の子どもたちのひとりであるとのことです。

毎年そうですが、今年も厳冬のオシェビンチェムからの記念行事の報道によれば、追悼行事に参加できる被害者は、ほとんどが解放時未成年であった人々になっているとのことです。
この人類史最悪の人道犯罪の犠牲者たちの心身の傷は68年経っても癒えることはありません。

なを、アウシュヴィッツ解放記念日は、ドイツでは20年ほど前から国の追悼記念日とされています。今年は27日が日曜日となったこともあり、またナチスの権力掌握80周年記念日である1月30日に連邦議会をはじめ公式な追悼行事が行われることになっています。
自国の過去の負の史実を直視し忘れないことは、1985年のワイツゼッカー演説のころからドイツの国是となっています。だからこそ、原子力発電技術の危険性も全社会で察知する能力が養われ、脱原発社会とへ確実に歩むことができているのだと考えています。
また原発事故は、人間だけでなく地球の全ての生命をほぼ無限に脅かし続ける、アウシュヴィッツでのジェノサイドよりもさらに悪質な人類的犯罪なのです。

 そして今日、よりによってこの記念日に、日本からわたしのこのブログが、特定のブラウザでは読めなくなっているという思いがけない知らせがありました。
大沼安史さんの個人新聞「机の上の空」に以下のような→わたし宛の記事があるのです。
3・11以降、全力を挙げて海外の情報を日本に伝え、それをすでに数冊の著作にされて、一度は→酷いサイバーテロに遭った経験のある大沼さんからの警告ですので、これは真剣に警戒すべきでしょう。

このブログでは、フランスのマリ軍事介入に呼応するように起こったアルジェリアの人質事件の背景にはフランスの国営原子力産業アレバ社のウラン利権があり、それに日本がしっかりと噛んでいることを具体的に指摘した日本語での報道は、いまのところこのブログだけ(→第1報、→第2報)であるようです。

 そのためアメリカ合衆国とフランスからのアクセスが急に増えているので、この国際原子力ロビーの権益を擁護する筋が、大沼さんが推定されているように「ネット妨害」に出ても不思議ではありません。彼らは原子力マフィアですので、利権擁護のための違法行為は主な手段なのです。
この件については、原子力経済から撤退したドイツのメディアでは、さすがに早くから優れた報道がありますので、これからも徐々に第3、4報と続けて紹介しますのでご期待下さい。
前述のように、原発事故は、アウシュヴィッツでのジェノサイドよりも悪質な人類的犯罪です。 それに触れる事実を隠し、抹殺しようとする力は巨大です。


以下、大沼さんの警告をここでも以下に記録しておき、読者の皆さんへのお願いがあります、もし同様な特定のブラウザがブロックされた経験をなさった方は、コメント欄からでもお知らせ下されば幸いです。

以下引用です:

フクシマ核惨事 ネット工作情報 梶村太一郎さん明日らしま」(反核ベルリン通信)、「インターネットエクスプローラでは開かなくされている! 「グーグルクロームなら 丈夫!  高度なネットエキスパートチームを抱えたおそらくはPR企業から業務を発注された?)諜報企業が妨害に出ている疑い

  梶村さん! 最近、お礼の返事を出せずにいたのは、こういう事情があったからです。
 でも、梶村さん! ドイツの検察なら、訴えれば捜査に動いてくれるかも知れません!
 小生の翻訳した下記の本に、ドイツでの「摘発」の事例が出ています!
  http://tkajimura.blogspot.jp/
 梶村さんの「明日うらしま」、わたし(大沼)のパソコンで、しばらく開けない状態が続いていました。わたしのPCへのネット攻撃かな、と思ってい たところ、友人の確認でも「インターネット・エクスプローラー」ではやはり開けず、ブラウザーをグルーグル・クロームに変えて試したところ、つながること が判明! わたしもいま、試したところ、「クローム」なら大丈夫でした!
 欧米で暗躍している諜報企業が、日本でも、(おそらくは)どこかのPR会社の依頼で、ネット妨害に出ているような気がしています。
 「諜報企業」については、わたしの翻訳した以下の本をお読みいただけでばさいわいです。お近くの図書館にもあるかも知れません。 
   http://www.ryokufu.com/isbn978-4-8461-1113-7n.html


公然と警告して下さった大沼さんに感謝します。
これは、大沼さんの翻訳書でまたまた勉強しなければならないようです。本書『諜報ビジネス最前線』の解説には以下のようにありますので。
エイモンジャヴァーズ[著]/大沼安史[訳]
秘密ヴェールに包まれた現代諜報企業による産業化した諜報活動──暗躍実態はしかし奥に潜んでいて私たちには皆目見当 が付かない路地裏探偵ならイメージも湧こ世界的な諜報企業による諜報活動となると一体どんな人物がどこで何をやっているも 想像すらできない  しかしグローバル化した経済においてはより重大かつ危険な秘密情報が企業活動成否を決めており諜報ビジネスは企業世界的な活動に とって今や不可欠なもと見なされている  本書は米国調査報道ジャーナリスト第一人者がそ全貌を世界で初めて明らかにする


2013年1月24日木曜日

144:双葉町は永遠に/井戸川克隆町長辞任のメーッセージ

 福島県双葉町の井戸川町長が、1月23日に町長辞任を表明し、以下のメッセージを23日付で同町のホームページに掲載されました。


http://www.town.futaba.fukushima.jp/message/20130123.html/

 フクシマ原発事故で最も過酷な影響を受け、いまだに日本政府から冷たく棄民として扱われている住民の長として、2年近く全力を挙げて闘い続けてこられましたが、体力的に限界になられたようです。
戦後日本が直面した最大の危機に町民のために、真っ正面から立ち向かわれ闘い続けた政治家の次世代へのメッセージとして希有のものです。

原発事故がアウシュヴィッツのジェノサイドと本質的には同じ暴力であり、ゆっくりとした民族虐殺であることを体験から訴え、県や政府の政治家の無能を厳しく告発されています。
まったくその通りであり、原発事故は最悪の無差別テロなのです。 

(追加:→この部分の英訳はこちらで読めます。)

辞任は残念で、できれば再起していただきたいものですが、敬意を込めて以下記録させていただきます。

町長の声は昨年のベルリン映画祭、またジュネーブの国連人権委員会などで、すでに世界に広がっています。このメッセージもフクシマの声として全世界に広がるでしょう。

こころから感謝を込めて 

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  双葉町は永遠に

私たちは前例の無い避難という過酷な状況に置かれています。いつまでも海原を漂流するわけにはいきません。早く上陸地を国が準備して、再興できる日を求めてきました。しかし、時間が足りませんでした。
 放射能のないところで平和な、皆が集える町ができることを祈り町民の安寧を願って、私は本日、双葉町長の辞職申し出をしました。
 私の今までの取り組みから次のことを申し上げたいと存じます。

1 事故に負けない
 原発事故で負けるということは、今のまま、何もしないことである。
 双葉町民には負けてほしくない。勝ってそれぞれ生き抜いてもらいたい。今はそれぞれの地に離れて住もうとも、廃炉が完了して故郷から放射能の危険が去り、自然と共生出来るようになったら再結集しよう。
 我が子どもたちへ、この悔しさを忘れることなく、何としても生き抜いて何倍も幸せな双葉町を再建していただきたい。そのためにも負けないで学び、求められる人になれ。世界の雄になってもらいたい。
(1) 負けないということは以下のことを忘れないこと
①避難してくださいと国から頼まれたこと。
②東電と国は事故を絶対起こさないと言っていたこと。
③町と県と東電には安全協定があること。
④事故は我々が起こしたものではないこと。
⑤正式な謝罪と見舞いがないこと。(形のあるものではないこと)
⑥自分の権利は自分以外に行使できないこと。
⑦被ばくさせられたこと。
⑧放射能の片付けをさせられること。
⑨20msv/yで町へ帰ること。(一般公衆の限度は1msv/y以下)
(2) 勝つためには何をしなければならないか
①事故の原因者を確定すること。
②我々の受けた損害のメニュー作成すること。
③損害の積算をすること。
④回復の請求をすること。
⑤回復の限界と代替を請求すること。(仮の町、借りの町)
⑥立証責任の不存在を共有すること。
⑦気づくこと。
⑧水俣の住民の苦難を学ぶこと。
⑨広島・長崎の住民の方に聞くこと。
⑩避難先の皆さんの恩を忘れないこと。
⑪多くの町民が健全な遺伝子を保つこと。
⑫ウクライナの現実を確認して同じテツを踏まないこと。
(3) 町民の力を結集すること
①役割分担をすること。
 ・汚染調査 ・除染問題 ・賠償問題
 ・住居問題 ・職場問題 ・健康問題
 ・墓地問題 ・学校問題 ・中間貯蔵施設問題
 などの調査研究する組織をつくり町民の不利益を解消すること。
②事故調査委員会をつくること
 事故の報告書には避難を強制された住民の実態が語られていない。外部に任せていたらいい加減に処理されてしまうので、委員会を町独自に構成して正しい記録を残さなければならない。

2 主張する権利を行使する
①見守り隊の組織
②法律家の組織
③文書学事の組織
④ボランティア活動組織
⑤被ばく被害者団体の組織
などを組織して国民の主権と被害者の復権を勝ち取らなければならない。
3 この世には先人の教えがある
(1) 温故知新
 歴史から新しい発想が出てくる。自分が直面している問題について語られています。遠くは私たちの祖先である標葉藩が相 馬に滅ぼされたこと、会津藩が長州に負けたこと。しかし、負けても滅びる事もなく私たちは生きてきました。先人達に感謝し、これからは私たちが町の存続を 引き継ぎ後世に繋がなければなりません。今度の事故は前例がありません。今は子どもたちを放射能の影響によるDNAの損傷を避けて暮らし、幾多の困難に負 けずに 双葉町の再興に向かって、生き延びましょう。
(2) 人生に五計あり
 中国、宋時代の朱新仲が教訓として伝えた人生の処世訓とされるものです。生計、身計、家計、老計、終計があり、生き抜く考えが記されています。
(3) 八正道と言う道
 昔、釈迦がインドで行われていた求道について、新しい道があることを説いたとされています。
正見   : 正しい物の見方
正思惟 : 正しい思考
正語   : 偽りのない言葉
正業   : 正しい行為
正命   : 正しい職業
正精進 : 正しい努力
正念   : 正しい集中力
正定   : 正しい精神統一

 今の私たちにはこのような精神にはなれません。この言葉は東電と国あるいはこの事故を被害者の人権を無視して矮小化しようとしている勢力に猛省を促す言葉として捉えてほしい。願わくば、双葉町の子どもたちに人生の教訓の一部として、心に刻んでほしい。

 この事故で学んだことは多い。我国でも人命軽視をするのだと言うことがわかった。国は避難指示と言う宣戦布告を私たちに出した。武器も、手段も、権限もない我々はどうして戦えるだろうか。

  白河市にアウシュヴィッツ博物館がある。ナチスがユダヤ人を毒ガスで虐殺したことは衆目の事実だ。福島県内では放射能という毒で県民のDNAを痛めつけて いる。後先が逆だ。この状態から一刻も早く避難をさせること以外に、健康の保証は無い。その後に十分時間をかけて除染をやれば良い。
 人工放射能に安全の基準を言う実績が少ない。20msv/yで住めると言う人が家族と一緒に住んで示すことが先だろう。その安全が確認出来たら福島県民は戻ればいい。これ以上モルモットにするのは、外国の暴君が国民にミサイルを撃つのと変わり無い。
 福島の復興なくして日本の再生はないとは、人口減少の今、将来の担い手を痛めつけていては、真に福島の復興には繋がらないと心配している県民は少なくないと思う。双葉町は原発を誘致して町に住めなくされた。原発関連の交付金で造った物はすべて町に置いてきました。

  原発の誘致は町だけで出来ない、県が大きく関わってはじめて可能となる。私たちは全国の人たちから、「お前たちが原発を誘致しておいて被害者面するな」と いう批判を受けている。私たちはどこにいても本当の居場所がない今、苦悩に負けそうになりながら必死に生きている。子どもたち、高齢者、家計を支えなけれ ばならないお父さん、お母さんたちの悲鳴を最初に菅総理に訴えた。変わらなかった。そのために私は野田総理に国民としての待遇を訴えたのです。しかし、今 の町民の皆さんは限界を超えています。何とか国には町民の窮状を訴え、町民には叱られ役をやり、マスコミに出されるようにしてきました。

  県にも窮状を訴えています。最近も質問をしました。回答は具体的な内容ではなく失望しました。知事は福島の復興のために双葉町に中間貯蔵施設を造れと言う ので、双葉町の復興はどうするのですか、と聞くと答えてくれません。そこで、踏み込んで私に町をくださいと言いましたがやはり答えませんでした。これでは 話し合いになりません。

 環境省の局長にどうして双葉に二つの場所を決めたのですかと聞いたら、分かりませんと言いました。では会議録をみせてくださいと聞いたら、後日ありませんと言う返事でした。このようなことで、調査だけで建設はしないからと言われて、ハイいいですよとは言えません。
 町には古くから先人が築いてきた歴史や資産があります。歴史を理解していない人に中間貯蔵施設を造れとは言われたくありません。町民の皆さんが十分議論した後に方向を決めていただきたい。若い人に決めてもらうようにしてほしい。

  今まで支えていただきました町民の皆様、双葉地方各町村をはじめ福島県内各市町村の皆様、国及び福島県そして事故発生時から避難救済にご支援いただきまし た国民の皆様、国会議員の皆様、全国の自治体の皆様、埼玉県と埼玉県議会の皆様、県民の皆様、加須市と加須市議会の皆様、市民の皆様、さくら市の皆様、医 療界の皆様、福祉関係の皆様、貴重な情報の提供された方、最後に国内並びに世界中からボランティアのご支援をいただきました皆様、この避難を契機にご支援 いただきました多くの皆様に支えられて、ここまで来ることができました。心から感謝を申し上げまして、退任のご挨拶に代えさせていただきます。
 長い間誠にありがとうございました。

 

 平成25年1月23日



双葉町長 井戸川 克隆

2013年1月21日月曜日

143:アルジェリア人質事件の背景に日仏の巨大なウラン利権(第2報)ニジェールのヒバクシャに思いを致そう

(第2報1月20日)

 アルジェリア政府の発表と報道によれば、残念ながら人質事件は最低でも80人もの死者を出して終了したとのことです。日本人も多く犠牲になったようです。

 Abd al-Rahman al-Nigri: AFP/ SITE Intelligence Group
この写真の男性はシュピーゲル誌電子版が19日 、アルジェリアのガス施設での人質事件の現場で死亡した→テロリスト襲撃部隊の指揮をした人物として報道したAFP配信によるものです。
 同報道によれば、彼アブドル・ラフマン・アル-ナイジェリは事件現場から800キロ離れたニジェールの出身であり、これまでもアルジェリア出身の「聖戦血盟団」の首謀者モクタール・ベルモフタールの下で、多くの誘拐事件に関与した疑いがあるとのことです。同じくドイツ公共第2テレビ→ZDFも同日のニュースで同じ写真をモーリタニアの通信社からの報道として使っています。事件現場で彼が指揮をしている映像があるとのことです。
現時点で確認は出来ていませんが、この人物も下記のトゥアレグ族であると思われます。またこの人物については、→共同通信も同様の配信をしています。

 これらの報道が事実であるとすれば、日本人も人質にされ、殺害されたこの事件の実行犯のひとりであることになります。いったい彼が決死の犯行に及んだ理由は何であるのでしょうか?
       
 日本からは、東京新聞は19日の→コラム「筆洗」は次のように伝えています(全文引用させていただきます):

フランスは地獄門を開いた」。西アフリカマリでイスラム武装勢力を率いる赤鬚ひげ)」異名を持つ男が語ったといまさに地獄を見る 思いだマリ北隣アルジェリアで起きた人質事件は鎮圧作戦実施が伝えられたが人質多く安否は分からない無事知らせを待つご家族にとり残酷な ほど重い時間が流れる地獄門を開いたとされるフランスによるマリイスラム武装勢力へ空爆だマリで急激に台頭した勢力を叩たたきつ ぶそとい軍事作戦だが作戦がもくろみ通り進んだ例ためしほとんどないなぜか軍事作戦を進める側が武装勢力実像をつかめてい ないからだ情報はここでも錯綜さくそする現地から報道も麻薬密輸や誘拐身代金稼ぎ無法者情報もあれば、「権力が腐敗した地に秩序 をもたらし貧困層対策で支持を得ている指摘もある恐らくどちらも彼らだろ広大なあ地で反政府活動をする様々な人々をテロ リストと一緒くたに呼びただ軍事攻撃的とする限り彼ら実像は見えてこないはずだドビルパン元仏首相が戦争はフランス戦争ではない 戦争とい袋小路から抜け出す新たなモデルをみつけるわが国義務だと言っている悲劇を繰り返さぬため各国共通義務だろ
 
 これを読んでわたしが思い出すのは、日本の中国東北地方(いわゆる「満州」)と中国侵略の歴史です。ちょうど百年ほど前から日本はそこでの利権を追求し、そこを支配する軍閥勢力を「馬賊・匪賊」と呼び、陰謀と武力で排除しようとしました。「満州事変」を中国との話し合いで解決しようとした犬養毅首相は、五・一五事件で青年将校らに暗殺され、ここから日本の歴史は引き返すことの出来ない「地獄の門」を通過します。その後、「支那事変」では中国共産党軍を「共匪」と呼び、いまだに癒えない傷を中国に残し、地獄に転落しました。
ここでの「匪賊、共匪」 と、現在西アフリカでの「テロリスト」は上記のコラムが指摘するように発想が底通しているように思えます。

 すなわち、「広大なあ地で反政府活動をする様々な人々をテロ リストと一緒くたに呼」ぶ前に、「彼らの実像」を知るべきでしょう。
わたしも西アフリカの歴史と実情をあまり知っているとはいえませんし、極めて複雑な多くの武装勢力とその背景にある諸民族については欧米の報道程度の知識しかありません。それでも今回のアルジェリア人質事件の背景を知るために、この地方の現実を以下に簡単に述べますので参考にして下さい。

トゥアレグ族の居住地
左の図はサハラから西アフリカの原住民であり、遊牧と通商で有名な→トゥアレグ族・Tuaregの 居住地域です。国境をまたいでリビアを除けばほとんどがフランスの旧植民地諸国の5カ国が彼らの勢力範囲です。
インジゴーの衣服で有名な戦闘的な砂漠の部族としては有名です。
人口も推定で150万人までですが、ニジェールに70万人、マリに30万人いるとAFPは→歴史経緯の解説で伝えています。
彼らは、旧植民地宗主国にとっては、独自の文化を持つ誇り高い「まつろわぬ民」であり、反植民地闘争を続け、1960年代に植民地諸国が独立を果たした頃から独立国家を要求しています。
トァレグの家族

2011年のリビア内戦では、カダフィ側に傭兵としてつきましたが、政権崩壊とともにカダフィ政権の残したロシアとアメリカ製の高性能な武器を手に入れて、マリ北部を制圧し昨年4月6日に、彼らの長年の夢である「アザワド国」の分離独立を宣言しました。これを隣国ニジェールの大統領は→「アフリカのアフガニスタン」であると述べたとのことです。

 この北部分離が原因で、アフリカでは例外的な議会制民主主義がそれなりに実現していたマリですが、事態に対処できない政府に対し軍事クーデターが起こって軍事政権となっています。これについては明日1月21日発売のシュピーゲル誌が→「地獄の門」と題する記事で次のことを報じています。電子版ではまだ読めませんのでその1部を紹介します。

それによれば、 アフガニスタンで懲りているアメリカは、直接の軍事介入はしないとこれまで表明していますが、実はマリで現地人トゥアレグ族を中心に合計600名の対テロ特殊部隊4部隊を訓練しています。ところが、よりによってその内3部隊が寝返って北マリのトゥアレグ族のイスラム原理主義者へ合流し、唯一残った1部隊がクーデターを起こしたとのことです。

 すなわちアメリカはまさにアフガニスタンでオサマ・ビンラーデンを使い、それがイスラム原理主義を拡大させることになったと同じ失敗をここでも繰り返して臍を噛んでいるようです。

マリ中部のティブクツに進出したイスラム部隊AFP
マリ北部では「砂漠の獅子」と呼ばれるトゥアレグ族のアグ・ガリ傘下のイスラム原理主義のグループが勢力を伸ばして、急速に南下し続けています。制圧した地域では、タリバンのような→イスラム法・シャリーアを住民に押しつけ、禁じられているタバコの売買をしただけで右手首切断するような極端な処罰が行われているようです。
 そのため北部からの難民が増加しており、一昨日の南ドイツ新聞のレポーターは首都バマコに逃げてきた手首を切断された青年2人の詳しい体験談を掲載しており、またドイツの公共テレビもマリから同様の報道をしています。

 このままでは、まもなくマリ共和国全体が制圧される危険性があると判断したオランデ仏大統領は、昨年末の国連安保理での決議を経て予定されていた、西アフリカ経済連合諸国の連合軍組織の成立を待つことなく、先週の1月11日に軍事介入に踏み切ったのです。
フランス軍の戦車を歓迎するマリ住民/Spiegel-AFP
ここ数日は左の写真のようにマリの住民はフランス軍の介入を喜び圧倒的に歓迎しています。

しかし上記のシュピーゲル誌は、フランスの専門家の話しとして「軍事介入で都市部から反乱部隊を排除することは可能でも、広大な地域での遊撃戦となると解決は数年かかっても難しい」と伝えています。
 トゥアレグ族の原理主義者たちは、訓練されており戦意も高く、なによりも自分たちの伝統的居住地の独立ないしは自治を求めているのです。
日中戦争での共産党軍の遊撃戦で点と線しか確保できず、ついには敗北した日本軍の経験に似た情勢となる可能性が強いとわたしは思います。また中東数カ国に分散して居住するクルド人のおかれた状況に似ているとも言えるでしょう。はっきりしていることは、武力ではこの問題は根本的には、決して解決できないということです。これを認識できない限り、いかなる権力でも必ず失敗します。パルチザンにはいかなる武力も無力であるからです。

 さて、政治的状況から観れば、フランスの軍事介入は、放置すれば間もなくマリと旧植民地諸国が第二のアフガニスタンとなるとの判断があり、また経済的側面からは、アフガニスタンとは反対に、この地域の豊富な金、ダイヤモンド、ウランなどの地下資源への利権喪失への危機感があることも間違いないことです。そしてこの面では→前回第1報で示唆しましたように、日本も深くかかわっています。
ニジェールのウラン鉱山
この地域で日本が深くからんでいるのは、隣国ニジェール西北部のトゥアレグ族居住地にあるウラン鉱山抗採の利権です。
ニジェールは→世界最貧国のひとつです。住民の多くが日に1ドル ほどで生活している農業国で、たよりは世界第三の埋蔵量と推定されているウランです。

昨年7月には、震災関連の国際防災会議で、日本を訪れた同国の外相と玄葉外相が 会談し、→外務省のプレスリリースにはそれについて以下のようにあります。
 
(2012年7月4日外務省)
玄葉大臣から,「世界防災閣僚会議in東北バズム外相出席に謝意を表明しつつニジェールから我が国に対する40年以上に及ぶ安定したラン供 給に代表される良好な日ニジェール二国間関係について言及しさらなる関係強化ためにも治安改善が重要であることを強調しました


ではここで強調されている「40年にわたるウラン供給の良好な関係」とはどのようなものなのでしょうか。
日本のウラン供給先
 日本は右の図に観られるように、ニジェールから13%ほどのウランを輸入しており、ある統計によると原子力発電が始まって以来、日本の電力需要の24分の1、すなわち毎日1時間ほどの電力は同国のウランによるものだとも言われています。
 そこで、その内容をについてですが、下の図はエネルギー庁によるウラン供給先の権益のリストです。
エネルギー庁資料


 この図で見られるように、ニジェールのアクータ鉱山の権益に日本の電力会社が共同で立ち上げた→海外ウラン資源開発株式会社というまさに→日本原子力ムラ原料供給部門とも言える会社が、1974年より、25%出資しています。注目すべきはフランスのアレバ社が、ニジェール国営会社の31%より多い34%の筆頭出資で、事実上の権益主であることです。ニジェールはこの面では、独立しても依然として経済的にフランスの半植民地状態にあることを示しています。


この写真はアクータ鉱山株式会社(フランス名COMINAK)のウラン鉱山と、イエローケーキをつくる精錬工場です。この鉱山は広大なものです。
フランスは原子力発電のウラン燃料の多くの部分をここから供給しているのですから、ここの権益を守るためには軍事介入もためらうことはないでしょう。
 

 では、トゥアレグ族の居住地の真ん中にあるこの鉱山が住民にとってどのようなものであるのでしょうか。
最近の→ルモンド紙のひとつの記事→ふらんすねこさんの翻訳で参考にしましょう。


 

アフリカラン産出国を汚染し続けるアレバ社住民被ばく被害を放置環境団体は共同事業を解消/ ルモンド紙(2012年1218

 
 アレバ社が掲げる「責任ある企業」のイメージは、無残に切り裂かれた。アレバ社が原子力発電の燃料となるウランを採掘する西アフリカのニ ジェールとガボンにおいて、同社と合同で周辺住民と鉱山労働者への健康被害を監視するための施設を運営する環境団体シェルパは1218日、施設の共同運 営を解消することを宣言した。アレバ社が健康被害の監視施設を単なる同社の宣伝にのみ使用し、被ばく被害への救済を行わず放置していることがその理由だ。


 2009年、アレバ社、環境団体シェルパ、世界の医療団の3組織は前代未聞の野心的な合意を結んだ。ウラン鉱山での採掘、特に放射性物質による被ば くが労働者及び周辺住民の健康に与える影響を監視するための医療施設を設置する、というものだ。こうした施設の設置は、CRIIRAD研究所とシェルパの 弁護士らが2003年以来合同で行ってきたウラン鉱周辺での被ばく被害に関する調査結果に基づいて実施されたものだ。


 CRIIRAD研究所による調査では、アレバ社によるウラン鉱山の採掘は「労働者と住民の健康、および周囲の環境に悲惨な影響を与えている」との指 摘がなされた。周辺の水や土壌からは高い濃度の放射性物質が検出され、放射性廃棄物が住宅の近辺で野ざらしになっているのが発見された。放射線からの防護 に必要な設備は設置されておらず、労働者の健康状態に関する監視もなされていなかった。こうした諸問題について非難が寄せられたのである。

 

またある方が「もうひとつの暮らし」というブログでフランスの環境誌から優れた翻訳をされていますので引用させていただきます。

ニジェール鉱山の労働者AFP
「ウラン採掘に苦しむニジェールの人々」

ウラン 牧畜民の不幸
フランスの大企業アルバにとっての幸運、ウラン鉱採掘は、ニジェール北部の住民にとって不幸の源でしかない。彼らの警告の叫びに耳を傾けなければならない。

  ニジェールのソマイルとコミナ両子会社の名の下に、核の大手企業アルバがウラン開発を始めてから、すでに39年以上がたった。開発が許可されているのは、 牧草地で有名なニジェール北部の中心部に位置する。ここで10万tU以上のウランが採掘されているにもかかわらず、ニジェールは地球上の最貧困国のひとつ にとどまっている。
 

ニジェール政府から許可済みの地区では、ウラン開発の影響は深刻だ。土地からは標準を越えた放射線反応があり、住民、環境、 地下水は明らかに汚染されている。牧草地は極端に減少し、汚染された住民は適切な治療を受けられないでいる。企業は事実を隠蔽し、彼らが公開する情報のす べてが偽造されている。最も重要な事実は、鉱山会社の数ある病院が、労働者のなかで病気を患っている人は誰もいないと発表している点だ。病院としての資格 は有しているが、ここは養護施設でしかない。さらに、ウランは掘り出され、その場で取り扱われ、近くの港までトラックで運ばれる。そこでもまた、安全性が 無視され、交通事故によって村が汚染させている。
 

今日、多くの人が鉱床の採掘状況を告発している。こうした状況の影響は、住民の健康や環境を直撃している。CRIIRAD(放射能に関する調査・情報の独立委員会)と市民団体Sherpaは、企業の基本的義務に違反しているとして、被害について報告している。
  

 特筆すべきは、ニジェール政府は現在にいたるまで何も学んいないどころか、探鉱調査と採掘に対して122の許可証を与えている点だ。その一帯はアガデズ地 方の9万㎡におよぶ。事前に何の情報も公開されず、住民は何も知らされていない。すでに2つの鉱区の存在が被害を生み出しているのだから、122の鉱区が 広範な土地に及ぼす影響はどれぐらいになるだろう。ニジェール経済の2番目に位置する牧畜産業、そして我々のような牧畜飼育者の将来はどうなるのだろう。
  

 ニジェール政府はいつになったら、この国が脅かされている危険に気づくのだろうか。無意識なのだろうか、それとも悪意的なのだろうか。ここ10ヶ月、ウラ ンを巡って政治・軍隊の対立(2007年2月からストが起き、政府が武力で弾圧している)がニジェール北部で繰り広げられている。安全性の欠如の増大と地 雷原のなかで、2つの火種が激突し、住民たちは、自分の土地のウランの存在がもたらす劇的な結果に耐え忍んでいる。アイル地区がすでに最初の引っ越し場所 として挙げられており、イフェロワンの住民(2000人)はティミアに向けて移住をしなければならなくなった。
 

 ニジェール政府が最高入札者に開 発許可を与え、国際市場でのウラン相場について交渉している最中に、ニジェール国民の一部の生存は脅かされているのだ。政府は、目の前の経済危機を恐れて いるのだろうか。開発によって国民と環境がどのような結末を迎えるか、それを知ることには気が回らないのだろうか。
 

 新しい許可鉱区には、最良の 牧草地の一部が含まれている。そこは最も保存され、最も多くの住民が住む土地だ。アガデズの村から、イハゼールの広大な渓谷、インガルの村、そしてテギッ ダまでの一帯におよぶ。ウランで犠牲になる土地はもうこれ以上ない。アッサウアスの近くでは、中国企業CNUCがウラン採掘を行っている。ここでは、開発 許可鉱区から住民を追い出し、牧畜飼育者が放牧用井戸を使用することを禁止している。
 ウラン鉱山の増加にともない、国民はどうなっていくのだろう? 我々の環境はどうなっていくのだろう?
 環境と人間が大災難をこうむる姿がくっきりと見える。ニジェール北部の住民である我々は、人間の生命と、牧草地という素晴らしい資源を守るために、危険な状況を告発し、国内外の世論に支援を求めている!
 飢えた人々に静かに忍び寄る死、執行猶予中の人間の命、こうした状況が、他の人たちを幸せにできるというのだろうか?



この優れた記事への 解説は不要でしょう。
このようにウラン鉱山周辺の人々を苦しめている核燃料が、原発事故で、同じように日本の人々を苦しめています。ニジェールとフクシマは放射線汚染で直接つながっているのです。
そして、2010年9月15日には、 ここのウラン鉱山のひとつのアレバ社のフランス人従業員5人を含む7人が、北アフリカのアルカイダグループ・Al Qaida au Maghreb Islamique (AQMI)に奇襲され誘拐される事件が起きています。従業員宿舎を警備していたニジェール軍が役に立たなかったのです。今回のアルジェリアの人質事件と同様なことがすでに起こっていたのです。

  あまり長くなりま すのでこのあたりで止めますが、以上のように今回のアルジェリアでの悲劇の背景には、直接の契機ではなくとも、核燃料を巡る確固とした国際的利権関係があり、日本もしっかりと関与しているという ことです。
フクシマを襲った悲劇は、このように遠くの昔からニジェールの貧しい人々の悲劇として始まっていたのです。
これが「両国間の良好な関係(上記外務 省見解)」の実態なのです。核の利権ほど自然と人間に敵対するものはないのです。声を挙げられないニジェールのヒバクシャに思いをいたしながら。