2014年6月30日月曜日

257:ドイツ紙がこぞってNHKの集団自衛権抗議の焼身自殺報道の欠落を指摘/報道不作為で自殺したNHKはAHKである/追加あり

 6月29日の新宿での集団自衛権抗議の焼身自殺事件は、海外でも広く報道され、 それらの→ロイターに続いてイギリス公共放送→BBCが電子版で報道、同内容の動画もつけて速報しました。いずれも、集団自衛権に抗議するものだとの証言をとりあげ、安倍晋三内閣の平和憲法を守るといいながらそれを破棄する「二重基準」のごまかしを指摘するものです。
 これがBBCの動画です。



 それらの中でも、ドイツの→ハンデルスブラット紙の東京特派員が、電子版で「日本の新たな安全保障政策に対する焼身自殺」との見出しと、「日本の首相は第二次大戦後に定着した平和憲法という日本の安全保障政策の基軸を揺さぶっている:これが東京で悲劇的抗議を呼び起こした」との小見出しで詳しく報道しています。

 最初の記事では、日本メディアの報道に関して以下のように伝えています。:
 ただし、電子版の差し替え記事では削られていますので、その部分を保存のため訳出しておきます。
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Die japanischen Medien sprangen erst mit extremer Verspätung auf den entsetzlichen Vorfall an. Der öffentlich-rechtliche Fernsehsender NHK verschwieg den Japanern in seinen Hauptnachrichten um 19 Uhr den Vorfall sogar gänzlich. Warum, ist unklar.
Klar jedoch ist, dass der neue Intendant des Senders bei seinem Antritt gesagt hatte, dass sein Sender die Regierung nicht kritisieren solle. Und die neue Sicherheitspolitik, gegen die sich der Protest des Unbekannten richtet, ist das langjährige Hauptprojekt von Japans Ministerpräsident Shinzo Abe. Es kommt dem Umsturz eines seit Jahrzehnten geltenden Pfeilers der japanischen Sicherheitspolitik gleich.

 日本の諸メディアは、極端な遅滞でこの驚くべき事件に取りかかっている。公共放送のNHKにいたっては、19時の主要ニュースで事件を全く報道しなかった。理由は判らない。
 ところが、はっきり判っていることは、この放送の新会長が就任時に、放送では政府批判をしてはならないと述べたことだ。この氏名不詳の抗議者が対抗しようとする新しい安全保障政策は安倍晋三首相の長年の主要なプロジェクトである。これは何十年も効力を持った日本の安全保障政策の柱を倒すことと同じなのである。
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続けて保守紙の→ディ・ヴェルト紙の同じく東京特派員が、これについて以下のように伝えています。その部分は以下のとおりです。見出しは「日本の再軍事化へ焼身自殺」です。-------------------------------------------

Selbstverbrennungen sind in Japan extrem selten. Trotzdem verzichtete der öffentlich-rechtliche Fernsehsender NHK auf einen Bericht darüber in den Hauptnachrichten um 19 Uhr Ortszeit, also fünf Stunden nach dem Vorfall. An der Neutralität des Senders kamen in den letzten Monaten immer mehr Zweifel auf. Er wird seit einem halben Jahr von einem Mann geführt, der von Premierminister Abe persönlich ausgesucht wurde.

 焼身自殺は日本では非常に稀である。にもかかわらず公共放送のNHKは19時の主要ニュースで報道をあきらめている、すなわち事件から5時間後にである。この放送の中立性については、ここ数ヶ月間に疑いが増加ししつつある。ここ半年間、安倍首相によって個人的に選ばれた人物によって指導されているのである。

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まるで自殺したのはNHKであるとの印象が得られます。

 以上のふたつの新聞は、日本でいえば日経と読売のようなものです。ドイツでは保守であればこそ、メディアの中立性に厳格であることが、ここにも現れています。どちらも明らかに深い懸念を示しています。もはやAHK(安倍放送協会)と呼んだ方が相応しいでしょう。
 
また、中道左派の南ドイツ新聞と双璧の中道右派のフランクフルター・アルゲマイネ紙が、NHK問題を→「政府放送局である」と厳しく批判したことは2月にすでに伝えたとおりです。 同特派員は→今回も電子版で詳しく現場情報とともに、集団自衛権を特に高年齢の日本人が懸念していることをこのデモの写真を加えて、日本のメディアはツイッターなどのソーシャルメディアに遅れて伝えたと報告しています。

 事件の背景がこの時点ではまだ明らかでないにせよ、集団自衛権への抗議行動であるとの証言は明確といえます。NHKは公共放送としての資格を完全に放棄してしまっていることがこれで明らかです。 視聴料詐欺行為どころではなく、不作為罪に当たります。NHKはこの焼身自殺報道を無視したことによって自殺したのです。

 以上は6月29日。以下30日に追加します: 

 スイスのドイツ語主要紙であるノイエチューリヒャー紙は東京から→「安倍の計画への抗議・東京で焼身自殺」と伝えていますが、その中でNHK以下の日本の大メディア全体を批判しています。その部分だけを訳出します。日本の大メディア内部の雰囲気を伝えている珍しいものです。

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Medien mit Beisshemmung

Shinjuku ist der meistfrequentierte Bahnhof Tokios, entsprechend wurden Hunderte Zeugen der Selbstverbrennung. Innert Kürze erschienen zahlreiche Bilder und Kommentare in den sozialen Netzwerken. Die klassischen Medien hingegen berichten kaum über die extreme Form des Protests. Der öffentlichrechtliche Sender NHK erwähnte die Selbstverbrennung in den nationalen Abendnachrichten nicht einmal. NHK steht seit längerem in der Kritik, sich bei der Regierung anzubiedern . Generell schrecken die grossen Medienhäuser davor zurück, das Vorgehen Abes zu stark zu hinterfragen. Ein Journalist sagt im Vertrauen, dass das Thema in seiner Redaktion eine heisse Kartoffel sei, die sich kaum jemand anzufassen traue. Keinesfalls will er mit seiner Aussage namentlich zitiert werden.

  喰いつきにひるむメディア


新宿は東京で最も往来の多い駅出あるので、自焼行為は何百人にも目撃された。直ちにソーシャルネットワークでは無数の画像とコメントが現れた。それに反して古典的なメディアでは、極端な形の抗議をほとんど伝えていない。公共放送NHKは国民的な夕刻のニュースで焼身自殺について全くふれなかった。NHKは政府に取り入ろうとしていると長い間批判にさらされている。大メディアは全般的に安倍のやり方に強く疑問を呈することにひるんでいる。ひとりのジャーナリストは、彼の編集部では、この問題は誰も拾おうとはしない火中の栗であると打ち明けた。彼はこの発言を決して氏名を挙げて引用してほしくないと望んでいる。

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 さらにニューヨークタイムス紙は29日付で、→「抗議者が自焼」と現場の様子を報告していますが、何と記事では次の映像をリンクしています。日本の大メディアでは絶対にできない報道です。(実はわたしも昨日これを見ていましたが、残酷ですのでブログ引用は避けていました。)これで世界中が現場の実像を見ることになります。知らぬはNHK以下の日本のテレビの視聴者だけとなります。

2 件のコメント:

  1. ドイツ各紙の指摘はとても重要だと思います。
    ただ、日本の放送は公平であることが求められますが、日本でもドイツでも新聞を含めたメディアは権力に取り込まれないことが求められるのであり、必ずしも中立である必要はないと理解しておりました。
    「ドイツでは保守であればこそ、メディアの中立性に厳格であることが、ここにも現れています」とは、ドイツのメディアは中立を求められるのでしょうか?

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    1. 春田明郎さま、
      ドイツだけでなくオランダの主要紙も同じような指摘をしています。ご指摘のとおり、わたしもメディアはおしなべて中立の立場を取る必要はないとおもいます。ただし、公共放送は中立で公平な報道をすることが求められます。民間放送よりも厳格にそれが要請されることはいうまでもありません。

      ドイツでもメディア全体が中立性を求められることはありませんが、公共、民間を問わず、それぞれの立場で批判的であることは公共、民間のいずれもつねに努力しています。このブログで紹介している多くの民間紙の論評や、公共放送のルポ(例「フクシマの嘘」)などに見られるとおりです。

      批判性を失えば、それは公器としてのメディアと言えないでしょう。
      ましてや社会的に大きな関心をもたれている件を無視するにいたっては論外です。この報道の不作為は虚偽報道の一種とみて良いでしょう。新宿焼身自殺事件のNHKによる無視はその典型例です。

      民主主義の実現は情報の透明を糧にしてのみ可能なのです。

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